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2021年9月「コロナ後遺症外来」を新設
地域全体で患者を受け入れる
仕組みづくりを目指す

副院長
夏目 重厚

新型コロナ感染者の35%が「コロナ後遺症」を持つとされています。
しかし、ブレインフォグをはじめ後遺症症状の多くは漠然としているため、医療難民化する人が後を絶ちません。
この状況を受け、当院では2021年9月、コロナ後遺症外来を開設。悩みや不安を抱える患者の受け皿としての機能を強化しています。

新型コロナ感染後の不調が放置される現状に直面し、コロナ後遺症外来を開設

2021年3月頃、日本神経学会で初めて、新型コロナ感染後の後遺症として「ブレインフォグ」が見られることが報告されました。ブレインフォグは霧かがかかったように頭がぼんやりする症状のことで、あちこちで報道されたのを機に一般の人にも後遺症の存在が認知されるようになりました。

しかし、このような症状に悩んでいても、適切な医療の機会がない人が実に多く存在します。特に顕著なのが中等症以下の人です。入院したが軽傷で済んだ人や、自宅やホテルでの療養を強いられた人たちの多くは、検査も診療も受けられず、不安を抱えたまま自宅に戻っています。
頭がぼんやりして集中力も続かない状態が続いているのに、医療機関に電話をしても断られるのは大きな問題です。中には、医療機関で診てもらえないために「診断書がないから仕事を休めない」という人も見られます。世界的な統計によればコロナ後遺症は35%の感染者に残るとされ、頻度が高いにも関わらずこのような状況が生じているわけです。

そこで当院では、2021年9月から本格的に外来診療を始める体制を整えました。最初の1カ月は、遠方の患者さんも含め約30人が受診されました。多くは働き盛りの40~50代ですが、20~30代と若い人もいます。
テレビや新聞でコロナ後遺症について知り、いてもたってもいられず来院した人や、嗅覚検査が受けられる施設を探して当院にたどり着いた人など、状況はさまざまです。現時点では予約や紹介状の有無にかかわらず、来院した方はすべて診療しています。

うつ病や嗅覚障害など、多彩な症状を一つひとつ地道に拾い上げる診療が重要

コロナの後遺症は多岐にわたり、第一に考えられるのが肺機能低下などの呼吸器症状です。ただし、呼吸器症状は呼吸器内科で診療できることが多く、それほど大きな問題ではないかもしれません。

一方、脳神経や精神面に関連する症状となると話は別で、対応できる医療機関が少ないのが現状です。例えばうつ病です。コロナ感染によって死の恐怖が生じ、心理的に参っていく人は大勢います。この傾向は、入院するほどの重症者よりも自宅・ホテルでの療養者に多く、トラウマがそのまま残ってしまうのです。このような感染後うつ病はインフルエンザでも見られますが、いずれも免疫反応の結果として起こるのではないかと言われています。また、インフルエンザ同様、ウイルス感染から脳症を引き起こすこともあります。これらの症状が単独で、あるいは関与し合っているのかについても注視せねばなりません。

あちこちで報道されている通り、嗅覚の異常を訴える人もいます。嗅覚や味覚がなくなる、あるいは匂いは分かるが非常に嫌な匂いがするなど、幻覚に近い症状が出ることもあります。これは鼻や舌そのものの異常ではなく、脳の中で感じ取る部位の機能異常によるのではないかと推測されます。

その他、慢性疲労症候群、脱毛などを訴える人もいます。このように、症状の幅が非常に広いのがコロナ後遺症の特徴です。

脳卒中診療で確立してきた検査体制を活用し、スムーズな外来運営を可能に

精神面の症状に対しては、心理テストや高次脳機能検査、記憶に関する検査など、数種類の検査を行っています。どの検査も時間がかかるので他院では難しいこともあると思いますが、脳神経疾患を専門とする当院ではこれらの検査に対応できる療法士が多く育っています。
脳卒中患者の6~7割がうつ病を併せ持つため、入院するすべての脳卒中患者にうつ病の検査を行うシステムが確立しており、既存の体制をそのまま活用することができるのです。うつ病に対する新しい検査体制をわざわざ作る必要がないため、運営は非常にスムーズです。
ただ、この外来を新設するにあたり、嗅覚の検査キットだけは新たに導入しました。嗅覚の状態をきちんと把握し、患者さんに結果を伝えることで安心感につながっています。

検査に際しては、本人も自覚していなかった持病が存在し、それが症状に影響しているというケースにもよく遭遇します。その一例が、肥満や睡眠時無呼吸症候群、糖尿病や高血圧などの疾患です。
健康診断をきちんと受けてこなかった30~40代の人が、コロナ後遺症外来で各種検査を受け、長年放置されていた病気が判明するのです。この場合には全身的な健康管理から見直さなければなりません。
コロナ後遺症に限らず全疾患に言えることですが、背景に潜む病気がないかを調べ、新たに分かった病気も含めて対応することが重要。総合診療の視点が強く求められていると感じます。

治療の第一ステップは、丁寧な説明によって不安を取り除くこと

コロナ後遺症の治療において第一ステップとなるのは、患者さんへの「説明」です。患者さんにとって一番の不安は、一体何の病気なのか、治療は可能なのか、何も分からないこと。
症状が起こり得る原因を含め、病態をしっかり説明して治療の方向性を明らかにするだけでも不安を取り除くことになり、患者さんは非常にすっきりします。

次のステップは薬物療法などの治療です。うつ傾向がある人であれば、希死念慮から重大事が起こるのを防ぐために抗うつ剤を処方することもあります。
現在使われている抗うつ剤は眠気などの副作用が少ないものが多いので、薬を変えながら経過を見ています。6カ月までは徐々に改善する可能性がありますが、6カ月後も症状が固定している場合は明確な後遺症といって考えていいでしょう。

また、嗅覚障害に関しては匂いのリハビリテーションが有効です。現時点ではそこまで必要とする患者さんは少ないのですが、要望に応じて当院で指導することは可能です。

地域全体でコロナ後遺症を診療する「受け皿」を増やすことが重要

マスコミでコロナ後遺症に関する報道があると、そのたびに反響があり、今後はさらに患者さんが増える可能性があります。
しかし、後遺症が疑われる人の受け入れ体制は、まだ日本国内で十分に確立していません。当院では必要に応じて外来の枠を広げることも検討していきますが、コロナ後遺症の疑いがあるすべての人を当院で診るには限界があります。
コロナ感染後、35%の人に後遺症が残ることを考慮すれば、地域全体で体制を整え、早急に受け皿を増やすことも必要となるでしょう。

そのために、当院で得られたデータを集積してコロナ後遺症に関する一般的な傾向を取りまとめ、ネット等で公表していきたいと考えています。
その情報をもとにコロナ後遺症を疑う症状があるかどうかを開業医がチェックし、当院に紹介していただければ、これまで行き場のなかった人を救うことにつながります。
こうした取り組みが、患者さんに地域の医療資源をうまく活用していただくための糸口になればと思っています。

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