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vol.01 Interview

vol.02 Interview

脳神経疾患の専門性を
活かし、“切れ目のない”
リハビリテーションで
地域医療に貢献する

副院長
夏目 重厚

脳卒中の急性期から、治療と並行してリハビリテーションを開始する。これこそが吉田病院のリハビリテーションにおける最大の特色です。
脳機能の効果的な回復に向けて人的資源や最新設備をそろえ、脳卒中の患者様を全面的にバックアップしています。
脳卒中におけるリハビリテーションも進歩しており、早期に適切なリハビリテーションが提供されることで、救うことができる患者さんが多くいます。
今回は当院リハビリテーションの特長や取り組みについてお話させていただきます。

急性期から回復期、退院後に至るまで、切れ目のないリハビリテーションが強み

当院は脳神経外科からスタートした病院であり、この領域では日本トップクラス、つまり世界的にもトップクラスの技術を持つと自負しています。最大の特徴は、治療と並行して早期からリハビリテーションを開始すること。理学療法士や作業療法士、言語聴覚士、MSWなどの専門職が入院と同時に担当として付き、急性期段階からリハビリ後のスケジュールまで把握しています。超急性期から急性期、回復期、さらに退院後の通所リハビリテーション・訪問リハビリテーションまで、治療方針が分断されることのない体制としているのです。

このような体制をとる病院が全国的に少ない中、理想的なリハビリテーションのあり方を盛り込んで構築したのが現在のシステムです。当院がモデルケースとなってこれが全国に広がり、患者さんに役立てていただくことを目指しています。

療法士の研修プログラムを完備し、「数」と「質」の両面を拡充する

従来、脳卒中のリハビリテーションは、残った脳機能をどう活かして在宅復帰までもっていくかという考え方でした。つまり後遺症に対するリハビリです。ところが、この20年で脳の神経科学が発達し、脳には損傷した部分の機能を補完する力が備わっていることが科学的に証明されてきました。この考えに基づき、当院では脳の可塑性に対して働きかけて効率的に回復させる「神経リハビリテーション」に力を入れています。

それを実現するために必要なのが、まずリハビリ介入の「タイミング」と療法士の「数」です。リハビリ開始が早いほど、そして運動量が多いほど、脳が順調に回復することが分かっている以上、療法士の数の確保は必須です。急性期担当の療法士の数は限られる医療機関が多いのですが、当院では急性期から、回復期病院と同程度の療法士が担当します。2021年9月現在、総勢96~97名の療法士が在籍しており、若手の教育にも力を注いでおり毎年20名弱の新人を採用しています。目指す体制は100名です。院内に療法士が溢れ返って初めて、理想のリハビリテーションが実現すると考えるからです。

数に加えて療法士の「質」も重要で、全療法士が神経リハビリテーションの知識・技術を持つプロフェッショナルであることが欠かせません。そこで当院で重視するのが研修プログラムです。療法士は入職直後から研修を始め、3年計画で専門性を高めるべく育成します。神経リハビリテーションについては、鹿児島大学名誉教授の川平和美氏から促通反復法(川平法)の指導を受けています。全療法士がこの技術を習得していることは他院にない特色と言っていいでしょう。技術を磨く勉強会や学会参加も活発で、全療法士が日々研鑽を積んでいます。

こうした環境を魅力に感じてか、今では全国から療法士が集まるようになりました。ここで療法士を育成するだけにとどまらず、彼らが全国に羽ばたいて当院での学びを広めていくことも視野に入れ、やり甲斐を持って人材育成に努めています。

あらゆる最新装置を導入して環境を整え、質の高いリハビリテーションを目指す

人間の脳は、足が動かないと思い込むと回復することを止めてしまうため、足が使えることを脳に自覚させなければなりません。これを実現するために当院では各種装置をそろえ、できる限り早期装具療法を行うようにしています。例えば磁気刺激装置です。
強い磁気刺激を与えると脳に渦電流が発生して活性化されますが、そこにリハビリ訓練を組み合わせることで回復効率が大きく向上します。また、ロボットスーツHALなどの機器も駆使して、リハビリテーションの質を高めるための環境を整えています。

リハビリテーションを進めるにあたり、患者さんの意欲を上げることも重要です。「今日は昨日よりいいですね」などと患者さんの努力をほめることもその1つですが、その際は数値の上昇など、根拠も示すよう心がけています。

ただ、それでも気分が落ち込んで意欲が下がる方もいらっしゃるので、脳卒中後うつ病の可能性も視野に入れ、看護師と療法士、医師がチームとなって全患者さんに関わり、異変の早期発見に努めます。同時に、筋肉量測定および栄養評価も毎月行って基本方針を立て直し、栄養状態を良くして筋肉を強くするサポートも怠りません。

回復の見込みがある人こそ、当院の技術・システムをフル活用して助けたい

当院では院長以下、「見捨てない医療」を目指し、どんな重症患者にも対応する用意があります。そのため、回復の可能性が低い患者さんが多く紹介される傾向があります。しかし、当院の強みである神経リハビリテーションの効果を発揮できるのは、重症の患者さんより、むしろ軽度から中等症程度で障害の少ない患者さんです。

どんな状態の方もしっかり診たいのは山々ですが、地域医療に貢献するためには、当院の技術・システムによって治る患者さんを優先的に診ることも必要となります。
軽度・中等度の方なら、当院では90%以上は自宅復帰が可能であり、回復の見込みのある人こそ効率良く治すことができるのです。治せる人をより良く、より早く治せるという当院の強みをご理解の上、フルに活用していただきたいと思います。

ただし、重症の脳卒中のうち、橋出血は早期にご紹介いただくメリットの多い疾患として位置づけています。出血開始時から四肢麻痺や意識障害があり、意思伝達が全く不可能なケースでも、車いすの操作や、眼球の動きやコンピュータを使った意思伝達が可能になるなど、回復が見込める例もあるからです。
橋出血だと診断されたら目途がつき次第、早めにご相談ください。

当院で治療を受けたかどうかに関わらず、後遺症や装具、社会的手続きまでサポート

後遺症については「ある程度は仕方がない、治らないもの」と思われがちですが、最新治療によって改善することも少なくありません。後遺症が出て2年、3年経った人も、外来で2週間、CI療法を行うだけでみるみる手が動くようになる例も見られます。
後遺症によっては、打つ手が残っている場合もあるのです。視力が低下した人を眼科に紹介するのと同じように、脳神経疾患を専門とする当院にぜひ一度ご相談いただけたらと思います。

また、当院には装具の相談を受け付ける装具外来があり、装具が作りっ放しにならないよう徹底したフォローを行っています。装具療法を行っても手足に強い痙縮が残るような場合は、ボトックス注射をお勧めすることもあります。
後遺症がありながら障害年金や身体障害者手帳の手続きを行っていない人に対しても、当院にかかっているかどうかに関わらずご相談に応じます。その際は、追加治療や家族指導の必要性についてもMSWチームがアドバイスを実施。相談を糸口として多角的にアプローチすることで見落としを防ぎます。

なお、紹介された患者さんの経過については詳細な報告書を作成します。必要に応じ、半年か1年後に定期検査を行い、その結果もかかりつけ医に報告。リハビリテーションに関することは当院で、日々の診療はかかりつけ医にお任せして、一緒に対応していく方針です。かかりつけ医に断りなく当院を受診された場合も、理由や結果などは報告致します。

通所リハビリテーションも脳神経疾患に特化し、高い専門性を発揮

地域の皆様のニーズは、「専門性の高い施設に安心してかかりたい」に尽きます。
通所リハビリテーションは同法人の医療介護院で対応していますが、脳神経系疾患の専門病院としての特性を活かし、パーキンソン病や脳卒中などに特化する方向で進めています。

訪問リハビリテーションや訪問看護も同様です。それにより、専門性の高いケアを必要とする方の在宅療養をしっかりサポートできると考えています。
対応するのは、脳神経疾患に精通する医師や療法士。患者さんやご家族が安心して生活できるように、今後も現状のシステムを進化させていくつもりです。

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