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腰椎圧迫骨折を“様子見”とすることなく、
積極的にアプローチする

脊髄外科部長 
松本 洋明

腰椎圧迫骨折は高齢化の進展に伴って増加している疾患の1つです。腰椎圧迫骨折が疑われる場合、当院では患者さんのご希望によっては入院した上で検査やリハビリテーションを行い、必要があれば薬物療法のみならず手術療法を含めて治療も速やかに開始することを基本としています。痛みがある方を“様子見”で医療難民化させることなく、積極的かつ迅速に検査・治療を受けていただける体制が強みです。

腰椎圧迫骨折の患者さんに自宅療養を強いることなく入院の上、検査やリハビリ、治療を迅速に進める

当院周辺の兵庫区、長田区は、神戸市内でもご高齢の方が比較的多い地域です。ちょっと転んだだけで骨折して日常生活を送るのが困難になりやすい、そんな方が多い土地柄だと言えます。その原因の1つが、骨粗しょう症からくる腰椎圧迫骨折です。

基本的に、圧迫骨折は死に直結するような病気ではありません。そのため近隣の整形外科にかかってもとりあえず安静にして、処方されたロキソプロフェンを飲んで様子を見る方が多いのではないでしょうか。診断がついたとしても、クリニックでは入院できないという理由で自宅療養する方もいます。総合病院の整形外科を受診しても、長期の入院が難しいために結局自宅に戻って療養することがあるようです。そうやって積極的な治療を受けられない生活が続くと、患者さんは自宅にいながら医療難民となってしまう、“自宅難民”と言えるような状況に陥りがちです。

当院の「脊椎・脊髄外科、三叉神経痛、顔面痙攣専門外来」では、腰椎圧迫骨折で動けずつらい思いをしている患者さんを積極的に受け入れています。強い痛みを訴える方を“とりあえず様子見”で済ませることなく、ご希望があればすぐに入院していただき早い段階からリハビリテーション、あるいは必要に応じて治療を開始する点が強みです。入院すれば、薬を使ってみて効果がない時は少し強めの薬に変えるなど、臨機応変に痛みのコントロールをすることが可能です。

即日検査・即日診断を基本とし、患者さんをお待たせしない

骨粗しょう症性からくる腰椎圧迫骨折は、ちょっと尻もちをついただけ、ちょっと体をひねっただけという程度でも急激に背中が痛くなって始まります。原因は分からないが体を動かすと背中がビリビリ痛むような場合は圧迫骨折の可能性が高いので、診断に困った時、早めにご紹介いただければ当院で診療させていただきます。

腰椎圧迫骨折が疑われる時はレントゲンだけで判定することが難しいため、腰のMRIを撮り、背骨の中の出血を確認して新鮮な圧迫骨折かどうかを確認する必要があります。しかし、MRI検査はすべての医療機関で可能なわけではありません。クリニックにはMRIを置いていないところが多いですし、総合病院ではMRIが予約制ですぐには受けられないこともあるでしょう。その点、当院では患者さんをお待たせすることなく即MRI検査が可能ですので、受診した当日のうちに診断をつけることができます。血液検査から始まり、MRIや全身のCTも含めて一通りの検査を行い、総合的に判断しながら治療を進めていきます。

保存的療法から低侵襲・最先端の手術まで広く対応

腰椎圧迫骨折に対しては、まずは保存的療法を行うのが基本です。コルセットやギプスで背骨を動かないように固定して安静にし、痛み止めを服用しながら1、2週間ほど様子を見ます。それでも強い痛みがあって日常生活が困難なほどつらい思いをされている場合は、早めに外科的治療も行うことも前向きに検討します。

外科的治療においては、低侵襲かつ最先端の手術を取り入れています。経皮的椎体形成術では折れた背骨の中にバルーンや金属製のステントを入れ、そこに骨セメントを注入して背骨を固め修復します。ただ、このような腰椎圧迫骨折への手術は脳神経外科医であれば、日本脊髄外科学会が認定する指導医資格を持つ医師しか行えないので、実施できる医療機関はかなり限られるのが現状です。神戸市内でこの指導医を持つ医師は3人のみであり、私はその1人として責任を持って治療に臨んでいます。また、重度かつ変形の強い圧迫骨折に対しても、固定術や椎体置換術などの高度の手術を行うことも可能です。

年齢的な変化から骨粗しょう症が起こり、骨粗しょう症があるために圧迫骨折が起こるわけですから、手術後は外来で骨粗しょう症の治療を続けることも大切です。骨粗しょう症を治療せず放置していれば、当然ながら再骨折のリスクが上がってしまいます。最近はテリパラチドなどの注射で骨を硬くすることで骨折予防が可能なので、注射治療は積極的に行います。カルシウムやビタミンDの摂取、運動習慣などについても理学療法士が入院中からアドバイスしますし、もちろん医師からもしっかり指導していきます。

早期リハビリテーションによりADL低下を回避する

誰でも、痛みがあると体を動かさなくなります。背骨が折れて強い痛みが出ると、患者さんは自宅にいても何もできず弱っていくばかりです。ベッドで1日中安静にしていれば、80歳以上の方なら3日で寝たきりになることもあるでしょう。日常生活動作(ADL)が著しく低下しないよう、せめて車椅子に座っていただくなど早期離床を促す関わりがけが大切です。

このような考えから、当院では入院された方には早期からリハビリテーションを開始しています。骨折のリハビリテーションというと理学療法だけというイメージがあるかもしれませんが、当院のリハビリテーションには特徴があり、患者さんの状況によっては作業療法や言語療法なども取り入れて進めます。この点は脳神経疾患を長く診療してきた専門病院ならではの特徴ではないかと思います。痛みがあってもこうすれば楽になる、といった日常生活のコツを交え、療法士がさまざまな角度から患者さんをサポートします。

脳神経疾患の専門病院ならではの特性を活かし、腰椎圧迫骨折の背後に潜む病気を見逃さない

転倒が原因で腰椎圧迫骨折が起こりやすいことは周知の事実ですが、そもそもなぜ転倒しやすくなったのか、その理由に着目することも大切です。高齢になると全身に複数の疾患を併せ持つ方が多いため、ふらつく、歩きにくいなどの些細な症状を“年のせい”で終わらせず、果たして単純に加齢のせいなのか、本当に歩行障害だけなのか、さまざまな視点から疑わなければなりません。最近はロコモティブシンドロームの概念が広まり加齢に伴う筋力低下への注意喚起がされるようになりましたが、ロコモについても、増悪させる因子が潜んでいないかを見極める必要があります。頭や首、腰などを診ていくうちに、例えばパーキンソン病や正常圧水頭症、頸椎症のような脊髄・脊椎疾患など、治療すれば治るような病気が骨折の背後に隠れている可能性があるからです。

当院は正常圧水頭症センター、パーキンソン病治療センターなどの専門的な部門を備え、長年にわたり脳神経疾患を診療してきた実績を持っています。腰椎圧迫骨折の診療を行っている整形外科は数あれど、脳神経外科で診療することは少ないため、当院が腰椎圧迫骨折の患者さんを広く受け入れていることをご存じない方もいらっしゃるかもしれません。しかし、脳神経外科的なアプローチが可能な当院だからこそ、骨折以外の思わぬ病気を早期発見・早期治療につなげられるという強みがあります。

腰椎圧迫骨折の疑いがある方に対し、私たちは検査・入院の上ですぐにリハビリテーションを始め、手術も視野に入れて治療を開始します。同時に、転倒しやすい体質になった原因を含め、別の病気が隠れてないかもしっかり精査します。圧迫骨折で困っている、紹介先はないかと思われた時はぜひお気軽に当院までご相談ください。

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