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神戸初となる
「パーキンソン病治療センター」を開設

附属脳血管研究所所長・脳神経内科部長 
平田 温

神経難病のパーキンソン病は高齢化により増えている疾患の1つです。しかし、神戸市にはパーキンソン病を専門的に診るセンターがなかったため、このたび吉田病院は「パーキンソン病治療センター」を開設。脳神経疾患を長く診療してきた実績を生かし、地域の患者さんを適切なパーキンソン病治療に導くべく取り組んでいます。

パーキンソン病の専門センター開設により、地域の医療ニーズに応える

パーキンソン病は代表的な神経難病で、高齢化に伴い日本で顕著に増えつつあります。かつては50代で発症すると言われましたが、今や状況は大きく変わり、80代、90代で発症する方もいるほど発症年齢が上がってきました。
パーキンソン病の疑いのある人々を適切かつ早期に診断・治療することは急務となっているわけですが、これまで神戸界隈にはパーキンソン病専門のセンターがありませんでした。そこで当院に「パーキンソン病治療センター」を開設する運びとなりました。

当院には脳卒中治療センターがあり、長く脳神経疾患を診療してきた実績と体制があります。また、正常圧水頭症を専門とするセンターも備えているため、パーキンソン病やその類似疾患の診療も得意としています。パーキンソン病の外科的治療、脳深部刺激療法(DBS)の技術を持つ医師を迎えたこともあってセンターを開設し、パーキンソン病の診断・治療に貢献していきたいと考えています。

内科・外科・リハビリテーションの3つがそろった体制が強み

当センターの特徴は、パーキンソン病治療の柱である薬物治療・外科的治療・リハビリテーションの3つがそろい、同じ病院の中で一貫して診療できることです。

パーキンソン病には類似疾患が多く存在し、画像検査だけで診断するのは難しいという特性があります。当センターではまず神経症状をしっかり把握し、画像検査などによって他の類似疾患ではないかどうかの鑑別診断を行い、最終的にパーキンソン病の診断に持っていくという診断手技が確立しています。
日本神経学会認定の神経内科専門医2名が常勤で在籍するのに加え、日本脳神経外科学会が認定する脳神経外科専門医もおり、パーキンソン病に特化して機能できるだけの診療体制が整っています。放射性同位元素を用いるMIBG心筋シンチグラフィやDATスキャンなど、当センターで対応していない画像検査が必要になった場合は近隣の医療機関で実施できるよう連携しています。

リハビリテーションの体制がしっかりしている点も強みです。当院に在籍する100名近い療法士が、これまで培ってきた経験や知識をパーキンソン病治療センターでも発揮しています。センター開設に向けてリハビリテーションで行うべき検査や治療手技に関して院内勉強会を重ねてきましたが、豊富な知識を備えた療法士が育っていると自負しています。

地域に潜在するパーキンソン病患者を適切な診断・治療に導く

パーキンソン病の患者さんの中には、脳神経内科を受診するまでに何年もかかる人がいます。整形外科などから当センターへ紹介される患者さんも少なくない一方で、パーキンソン病であるにもかかわらず診断すら受けていない人が後を絶ちません。
適切に診断されていない人たちに手を差し伸べて早期診断・早期治療を行うことは、私たちが果たすべき責任だと考えています。地域の患者さんにパーキンソン病はきちんとした治療法がある病気なのだという事実を知っていただき、できるだけ速やかに診断して治療方針を提示するよう尽力しています。

実際に検査してみるとパーキンソン病ではなく、進行性核上性麻痺など類似疾患の一つであったケースを何例も経験していますが、いずれにせよ疑わしい症状に気づいたら早めの受診をお勧めします。
震える(振戦)、動きが少なくなる(無動・寡動)、前傾みで小刻みに歩く(歩行障害・姿勢異常)、筋肉が硬くなる(筋強剛)など、パーキンソン病を疑う症状が見られたらまずは当センターへご相談ください。

余談ですが、以前私が診療していた東北地方では、過疎地域に医療機関も限られていることから逆説的に医療機関相互の情報を得やすく、パーキンソン病と診断されないままの人はそれほど多くなかったと思います。それに対し神戸市は大都市ですから、医療機関同士の横の情報共有が不足するでしょうし、医療・福祉の谷間に埋もれる患者さんも出てくることが懸念されます。地域医療機関や介護施設などとの密な連携により、そこを変えていけたらと願っています。

薬剤のさじ加減が難しい疾患だからこそ、タイミングを逃さず治療を始めたい

パーキンソン病の薬物療法でよく用いるのがL-ドパです。この薬は非常によく効き、逆に効かなければパーキンソン病ではないと言ってもいいほど、特効薬として使いうる薬剤です。私たちの経験ではパーキンソン病だと考えてL-ドパを使用し効かなかった症例はほとんどありません。
L-ドパの用量を調整しながら薬物療法を開始します。パーキンソン病ではうつ気分や認知症、便秘、起立性低血圧などの非運動症状も多く、L-ドパのみでは解決できないこともあるため、その対策も考えながら進めます。

最初の5~6年はハネムーンピリオドと呼ばれるほど薬がよく効きますが、それ以降は効きが悪くなるケースが出てきます。その場合は薬剤量を増やしながら、L-ドパ周辺の薬剤も追加したり調整するわけですが、治療が進むにつれてジスキネジアやオン・オフ現象、ウェアリングオフ現象などの症状が出て、薬の効き目が見えにくくなることもあります。
そのため、L-ドパがよく効く早期のうちに受診していただくことが大事です。適切なタイミングで治療を始めるためにも、当センターへのご紹介・ご相談は早めにお願いできれば幸いです。

もっとも、患者さん自身が気にするほどの症状が出ていなければその限りではありません。一般的には、ご本人が何かしら不自由を感じ始めたときが治療開始のタイミングだとお考えください。

激増する薬剤性パーキンソニズムにも速やかに対応

昔から、精神科などで処方された向精神薬が原因でパーキンソン病に類似した症状が出る、薬剤性パーキンソニズムの存在が知られていました。ところが現在では、整形外科領域などで使われる神経障害性疼痛に対する薬剤など、パーキンソン症状を起こし得る薬剤が新たに知られるようになりました。

近年、この薬剤性パーキンソニズムの新しい傾向に対して、日本老年医学会でも「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」として注意を喚起しています。パーキンソン病の中に薬剤性パーキンソニズムがかなり紛れているのは事実ですが、薬剤性パーキンソニズムの原因が向精神薬だけではないことは意外と知られていません。
当センターに「お薬手帳」あるいは薬をお持ちいただいて調べれば速やかに診断や対応できますので、こうしたご相談にも積極的にお応えしていくつもりです。

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