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vol.12 Interview

vol.12 Interview

多職種と連携して
細やかなリハビリを提供

副院長 
診療支援部部長/リハビリテーション科部長
夏目 重厚

吉田病院はリハビリテーションにも力を入れています。脳卒中ケアユニット(SCU:stroke care unit)を導入し、多職種の専門スタッフが24時間体制で超急性期の脳血管障害の患者さんの治療に携わっています。急性期・回復期の治療一貫システムをとり、効果的な機能回復に向けて超早期にリハビリも開始しています。脳外科専門医のていねいな診断に基づき、多職種連携による川平法や早期装具療法などのリハビリが実践されています。

急性期・回復期一貫システムによる効率的なリハビリテーション

吉田病院では、回復期だけでなく急性期でも多人数の療法士を確保し、回復期と同程度のリハビリを行っています。急性期の最初の3、4週間にリハビリが十分に行われないと運動量が不足して廃用症候群が進むので、その分をあとで回復させるのは非効率です。また、リハビリのスタートが遅れるほど、日常生活動作(ADL:activities of daily living)の回復が難しくなります。

神経リハビリテーションの観点からも、急性期のリハビリは大切です。神経系が出血や梗塞で遮断されたとき、脳には別のルートで回復するなど可塑性のメカニズムがあります。可塑性によって機能が再獲得されるゴールデンタイムを逃さないためにも、リハビリの開始は早いほうがいいのです。

多職種との連携で細やかなリハビリが可能

脳卒中ケアユニット(SCU)で厚生労働省が意図したのは、急性期から多職種で行う効率的なチーム医療です。当院では、入院するとすぐにすべての患者さんにPT(理学療法士)、OT(作業療法士)、ST(言語聴覚士)、MSW(医療ソーシャルワーカー)の4職種の担当が決まり、退院するまで続きます。この体制によって認知機能の低下など脳卒中の陰に隠れている見逃されやすい症状も徹底的に調べられるメリットがあります。

当院では、患者さんが入院すると3日から1週間以内に開かれるゴール設定カンファレンスで、患者さんのゴールがどの辺りになりそうか検討しています。毎週、院長が議長となって急性期と回復期も含めたすべての入院患者さんを再評価するシステムです。例えば、家に帰る希望があっても実際には無理かもしれないケースでは、どうするのが患者さんにとって最適か担当のMSWがフォローします。

また当院では、一般病棟で短期集中リハビリが可能です。家の中で動く力が落ちた方や、パーキンソン病の患者さんで2週間ほど入院して濃厚なリハビリを行うと改善が見込める場合に勧めています。この場合も入院するとPT、OT、ST、MSWが交代で朝から晩まで対応するので、コミュニケーション能力も改善することがあります。年に1、2回取り入れて患者さんをサポートするシステムで、妥当性があると認められれば、どなたでも利用できます。

川平法・早期装具療法を取り入れた科学的なリハビリ

当院は鹿児島大学名誉教授の川平和美先生が開発した促通反復療法(川平法)を取り入れています。川平法は、以前から行われていた運動学習の訓練を効率よくした方法です。例えば歩くためには、歩く動きの効率的な動作を繰り返し続けます。電気刺激、振動刺激やロボットを併用するなど、新しい技術を取り入れられるのも川平法の特徴です。川平法はリハビリテーション医学会で、神経リハビリの手技として評価されています。

早期装具療法にも、積極的に取り組んでいます。義肢や義足を早めに装着すると、患者さんが日常生活に戻りやすくなることは、リハビリテーション医学会で20年以上前から認められています。例えば、右脚が麻痺している方に装具を使わないと、患者さんの脳は右脚を支配する部分がダメになったと学習して、ますます使えなくなることもありえます。

早期装具療法は特に下肢に対して行い、できれば24時間以内から装具をつけて立てるようにするのが目標です。装具には左右、大中小の6種類が最低必要で、軽いプラスチック製や少し硬いプラスチック製などの材質を組み合わせると50種類くらいが当院に揃っており、ほとんどの患者さんにすぐ提供できています。当院では、担当の医師とPT、MSW、義肢装具会社から来る義肢装具士でチームを作り、装具外来で検討して早期装具療法を進めています。入院されている患者さんだけではなく、外来患者さんにも同じ体制でその更新に対応しています。

後遺症に対する効果的な治療がある

後遺症に対して、CI療法や経頭蓋磁気刺激療法、装具装着訓練を行っています。CI療法は麻痺していない方の手を拘束して片手で作業する、2週間の訓練プログラムです。神経リハビリの代表的な治療法の1つで、主に外来で行っています。経頭蓋磁気刺激療法はリハビリに併用すると脳に働いて治療効果が上がるので、世界中で取り入れられるようになりました。短期集中リハビリの際に薬や注射をするわけでもなく、頭の上からパチンパチンと音がするコイルを乗せるだけで、ほとんど副作用はありません。

装具が合わない方には装具装着訓練のほか、筋肉を緩めるボツリヌス療法があります。足がつっぱり、かかとが地面につかない方でも薬剤を打つと、脚が緩んで装具の中にピタッとはまるようになり重宝しています。

脳を熟知する脳外科専門医が手術からリハビリまで

回復期リハビリ病棟の専従医と私は、もともと脳外科の専門医なので、脳神経の手術をするとどのようなリスクがあるか理解しています。重症状態だからといってリハビリを避けるのではなく、患者さんの機能が落ちないように安全な範囲で積極的なリハビリをする方針です。

くも膜下出血では、術後に水頭症の合併症が起きます。水頭症は頭の中で脳脊髄液の流れが止まって脳室が膨らんでくる疾患で、腹腔内に脳脊髄液を逃す治療をします。治療法のうちVPシャント術は、脳を通って脳室へ直接管を通すので脳の機能が少し落ちるといわれています。LPシャント術は腰椎の内側から腹腔に管を通す方法で脳に障害を与えませんが、難易度が高い手術です。当院では、脳の機能を保護できるLPシャント術が受けられます。

脳出血では、発症後6〜8時間経つと再出血はほぼしないことが脳外科分野で知られています。ただ場所によっては危険性があるので注意は必要です。この知識をもとに、発症24時間以内にスタートする超急性期リハビリテーションをしています。3日安静を取らせると機能が落ちるので、倒れたその日の夕方に座位や立つ練習を始めるようにしています。

橋出血の患者さんには意思疎通の可能性がある

脳幹は中脳、橋、延髄に分かれており、脳幹出血は主に橋で生じます。橋出血が起きると四肢麻痺になり、意識がなくなるので、気管切開をして胃瘻を入れる流れが一般的です。しかし長く経過をみると、一部の方は刺激に反応するようになります。「イエスなら1回、ノーなら2回、強く目を閉じてください」という形で患者さんと意思疎通ができるのです。重度の橋出血ではこのような閉じ込め症候群を経て回復する方が多くいます。

当院では、入院中にできるだけアプローチをして、患者さんの意思伝達を訓練しています。まぶたを動かすほか、空気の圧力で作動する空気スイッチ、指のわずかな筋収縮を感知する筋電スイッチなど、さまざまな方法があります。IT化が進んでテレビをつけたり、部屋の電気を消したりもできるようになりました。当院では、このように積極的に橋出血の方のリハビリに取り組んでいます。

パーキンソン病治療センターで総合的な治療が可能

パーキンソン病治療センターでは、薬物療法・外科的治療・リハビリテーションを柱とするパーキンソン病の治療を一貫して行えます。パーキンソン病の治療では、まず診断が正しいかの確認が大切です。当院では神経内科の専門医が診断しますが、パーキンソン病だと思われていた症例が、のちに違う病気だと判明するケースがあるのは神経内科の常識です。最初の診断だけではなく、神経内科専門医による途中経過の評価も大切です。

治療は薬物療法が中心ですが、ケースによっては手術で劇的によくなる場合もあります。また、パーキンソン病のリハビリの原則はできるだけ体を動かすことで、パーキンソン病の進行も遅くなります。自分では動こうとしない方も多く、頸頭蓋刺激装置を併用すると効果がでる場合もあります。LSVT® (Lee Silverman Voice Treatment)はパーキンソン病のために開発されたリハビリで、言語訓練と体を動かすトレーニングを組み合わせた方法です。当院には有資格者がおり、必要な方に行っています。

パーキンソン病の方は訴えが多いと考えられがちですが、その訴えのほとんどがパーキンソン病の症状です。血圧が下がりやすい、眠れない、気持ちが落ち込むといった症状は、適切な治療で改善が期待できます。さまざまな薬が開発されていますが、どの薬が現状に合っているか、患者さんとやりとりをして決めています。

整形外科分野のリハビリも

整形外科分野の技術が進歩して、合併症がある高齢の方にも手術ができるようになりました。大腿骨頸部圧迫骨折は、認知症や水頭症などで体のバランス機能が悪くなった方に起きやすく、リハビリがスムーズに進まないケースがあります。当院では、ベッドから起き上がれない段階から脚の筋肉強化のトレーニングを始めます。早期装具療法を取り入れたリハビリも可能です。当院はアルツハイマー病などの脳神経系の合併症がある方の整形外科術後リハビリも得意としています。

診断が難しい正常圧水頭症に多職種で連携

正常圧水頭症は鑑別診断が難しい病気ですが、治療によって改善が見込めます。認知症といわれていた患者さんの経過を診ていくと、アルツハイマー病に併発した正常圧水頭症だったケースがあります。特に、歩けない方に手術をして歩けるようになるケースがあるので、タイムリーに診断し、治療することが大切です。薬の副作用でパーキンソン病様の症状がでている場合があるので、常に状態を診断する必要があります。診断には、専門医だけではなく、STが認知機能を調べるなど多職種の役割が欠かせません。

当院は、脳外科の専門医が診断し、経過をみて適切な治療、リハビリを行う体制です。豊富な知識を持つスタッフが連携して患者さんをサポートしています。

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