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vol.13 Interview

vol.13 Interview

救急救命士が救急隊と病院をつなぎ、
地域医療をスピーディーに支える

救急救命士室 室長
藤本 佳孝

吉田病院は兵庫県神戸市で、脳神経外科を中心に高度急性期医療を提供しています。救急医療に力を入れ、地域の救急隊や医療機関と共に地域医療に貢献する方針です。吉田病院では、救急救命士が医師や看護師と共に医療を支えています。

医師や看護師の過労が社会問題となる中、吉田病院では救急救命士が他の専門職をサポートし、病院の運営を円滑にする新しい役割を担っています。また、消防署の救急隊と「共通言語」で連携し、患者さんをスムーズに救急搬送できるよう努めています。

脳梗塞では、血栓溶解薬のt-PA(組織型プラスミノゲン・アクティベータ)の迅速な投与が治療結果に関係し、スピーディな対応が重要です。吉田病院では、救急救命士や看護師、臨床工学技士の多職種の役割分担によって、t-PAの投与や血管内手術までの時間が短縮できるようになってきました。スムーズな治療提供は、患者さんのメリットにつながります。

国の方針で病院における救急救命士の配置が進んでいる

救急救命士は1991年(平成3年)に救急救命士法が制定されて創設された資格です。欧米では以前から、医師が同乗するドクターカーや、救急隊が救急現場で救命行為を行うパラメディックの制度がありました。救急救命の需要が増加したため、政府が海外の制度を参考に導入したのです。

2021年(令和3年)10月に救急救命士法が改正されました。これまで救急救命士の救急業務は、病院に到着するまでの搬送に限られていましたが、患者さんが病院に到着して入院するまでに拡大されたのです。法改正によって、院内でも職務として処置ができるようになりました。国は救急救命士の病院での運用を進める方針で、医師の指示による救急救命士の処置に救急救命管理料の診療報酬が新設されています。

10年ほど前から全国的に、医師や看護師の業務軽減が課題になっていました。徳洲会病院では救急医療の業務をチームで分担するのに、早い段階から救急救命士を配置しています。当院で救急救命士室を立ち上げた当初の目的も、救急外来の業務配分を効率化するためでした。 。

救急救命士が病院の業務をスムーズにし、医療チームを強化

2024年8月現在、吉田病院では9名の救急救命士が配置されています。当院での救急救命士の業務内容は多岐にわたります。救急外来では、救急患者の搬送や時間外受診患者の誘導、看護師と共にトリアージや問診、バイタル測定をしています。また、救急救命室(ER)に配置されている救急救命士は、救急隊からのホットラインの受け取りや医療業務の補助を担っています。

救急救命士は医療の多職種の中で、垣根なくオールラウンドに動ける存在です。医師の過労が問題になり、医師の働き方改革が始まりました。医師が行なっていた深夜の検体検査の業務を救急救命士にタスクシフトすると、医師の負担が減ります。手術がある日は看護師が手術の前後にする業務、いわゆるオペ出しをサポートするなど、臨機応変の対応が可能です。例えば、緊急手術の際、看護師が手術室の準備や薬剤の用意をする間に、救急救命士がバイタル測定をすると、看護師が業務に集中できます。救急救命士と看護師が情報共有し、患者さんを丁寧に診る体制にもつながります。多職種で役割分担して業務がスムーズになれば、病院がチームとして強化するでしょう。

救急救命士が救急隊と「共通言語」で24時間ホットラインの対応

当院では、救急救命士が必ず24時間、ホットラインに対応する体制です。内容を聴取して、患者さんを受け入れるかの判断もしています。事務職員や医師、看護師がホットラインを受けている病院が多いと思いますが、他の業務をしながらホットラインを受けるのは負担になる場合もあるでしょう。救急救命士が救急室や救急外来に配置されてマンパワーが増え、コロナ禍で減少した救急搬送件数も回復してきました。

救急要請をする救急隊員とは、救急救命士の養成課程や専門学校で同じ訓練や実習を受けています。救急隊が使う機材や専門用語が理解できるので、要請内容や現場のイメージを把握できます。いわば「共通言語」があり、お互いに連帯感が生まれやすい印象です。通訳のように、医師や看護師に救急隊の状況を伝えられるのも、私たちの強みです。病院の事務スタッフからも、救急隊とのやりとりがスムーズになったと言っていただきました。

病院で働く救急救命士が増えれば、医療が変わる

救急救命士が、院内で働く専門職の方で埋めきれないニッチな部分を担い、チームとしてまとめる役割をできればと思います。救急救命士のサポートで医療現場のマンパワー不足を軽減し、それぞれの仕事をより充実させるのが目標です。

違う職種がお互いに歩み寄り、共通のフィールドで働ける環境が整えば、救急患者さんの受け入れはよりスムーズになるでしょう。救急救命士にはオールラウンドに働ける柔軟さがあります。配属先の負担軽減につながる潤滑油のような役割を担えるよう、現場で臨機応変に動くトレーニングを受けています。

世の中の認識として、救急救命士は専門学校を卒業して資格を取得すると、消防署で勤務するイメージが根強いようです。しかし、救急救命士の輩出人数と消防署での採用人数には明らかなギャップがあります。救急救命士が活躍できる場が広がってほしいと思います。例えば、当院のスタッフが乗車する院内救急車を活用して、転院搬送を充実させる取り組みにも、救急救命士は役立てるでしょう。院内急変の対応や院内業務でも、私たちの専門性が活かせると考えています。病院スタッフをはじめ、近隣の企業や学校の一般の方にBLS(一次救命処置)の講習も可能です。救急救命士として他の職種の方々と共に成長できるよう、知識や技術、人間力を向上させる努力を続けたいと思います。

多くの方の思いを受けて、救急隊員から病院で働く救急救命士に

私は2013年(平成25年)に、救急救命士室のスタッフとして吉田病院で勤務を始めました。以前は、消防署で3年間ほど救急隊員として働いていましたが、吉田病院で救急救命士室を立ち上げた救急救命士の方にお誘いを受けて転身を決意したのです。今も恩師と慕っており、期待に応えたい思いでいます。

もともと救急隊員になろうと思ったきっかけは、幼い頃に海で溺れたとき、救急隊員の方に救助された経験や消防士だった叔父への憧れでした。消防士の延長線上で救急救命士の存在を知り、人助けを志して専門学校に入りました。

その後、消防署で働いていたときに、今でも尊敬している救急隊の隊長が教えてくれた、救急活動に対する心構えが心に響き、病院での就職につながっています。振り返ってみれば、多くの消防や救急に関わる方との絆があり、救急救命士として病院で働いています。

消防署の救急隊員と密に連携し、地域医療を支えたい

吉田病院では、救急患者さんの受け入れを強化しています。時間が勝負となる救急搬送の応需に対して、救急救命士が救急隊と情報交換し、お互いの業務を円滑にできれば、患者さんによりよい医療を提供できるでしょう。近隣の救急隊と勉強会や意見交換会でお互いを理解して信頼関係を築き、地域医療を共に支えていきたいと思います。

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