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vol.14 Interview

vol.14 Interview

目の症状で、
脳神経の病気を早期発見

理事長
吉田 泰久

脳卒中をはじめとする脳の病気は、複視や半盲、一過性黒内症といった目の症状からも見つかります。吉田病院は、地域の先生方からご紹介いただき、MRIなどを用いて鑑別診断をさせていただいています。また24時間、日本脳卒中学会専門医、脳神経外科学会専門医、脳神経血管内治療学会専門医が救急対応し、専門的な治療を提供できるようにしております。急性期が終わったあとのリハビリも回復期病棟で神経疾患に特化した専門的リハビリをトレーニングを受けた療法士が担当いたします。さらに、訪問リハビリや定期的な画像診断で、地域の先生方と連携しています。

高齢者の脳の病気を目の症状で早期発見

神戸市でも高齢化が進み、いろいろな併発症をお持ちの方がふえてきました。症状が固定する前の早期発見により、適切な予防策ができる場合もたくさんあります。脳卒中をはじめとする脳の病気で、構音障害や運動障害を生じるのはよく知られていますが、目の症状から脳神経疾患が見つかるケースも多くあります。患者さんは目の症状があると、かすかでも気づくものです。一般の方は目の異常があると眼科を受診することが多く、眼科の先生から脳神経外科によくご紹介いただきます。地域の先生方には、気になる目の症状がある患者さんを気軽にご相談いただければ幸いです。

目の症状で、脳の病気を疑う

目で見た像は網膜に刺激として伝わり、視神経を介して最終的に脳で処理されます。目から脳の経路のどこに異常があっても、患者さんが訴えるのは「目がおかしい」という症状です。脳の病気が目に現れる典型的な症状には、複視・眼瞼下垂などの眼球運動障害、半盲をはじめとした視野障害、片眼の一過性制視力低下(一過性黒内症)などがあげられます。それから考えられる脳神経疾患として脳梗塞や脳出血による神経核、経路の障害、下垂体腫瘍など脳腫瘍や膿瘍など による脳・神経圧迫による障害、特殊なものとしては、脳動脈瘤による動眼神経圧迫、海綿静脈洞部硬膜動静脈瘻などもあります。また、目の症状を呈する脳神経内科的疾患として重症筋無力症、多発性硬化症などもあります。

片目では正常、両目で見ると二重に見える「複視」

脳は両眼の軸を自動的に制御して両眼視で像が1つに見えるように調節しています。物が二重に見える症状がある際は、片眼あるいは両眼で見た場合かの確認が診断の鍵です。片眼でもぶれて見えるなら、角膜や水晶体の形状による可能性が高いでしょう。片眼では正常に見えるのに、両眼で見ると物が二重に見える症状は複視で、脳神経の障害を疑います。

眼球運動を司る神経核は中脳・橋といった脳幹にあります。脳梗塞や脳出血、脳腫瘍などにより、脳幹障害がおこった場合は、構音障害や四肢の感覚障害、運動障害を伴うケースがよくあります。また、脳幹から眼窩内までの神経走行路で障害を受けた場合にも複視がおこります。内頸動脈瘤による動眼神経麻痺、海面静脈洞部動静脈瘻による外転神経・動眼神経麻痺などがあげられます。

両目とも視野が半分欠ける「半盲」

片眼の視神経が障害されると、障害側だけの視力低下や視野欠損が生じます。一方、視交叉以降の脳内の視覚路で障害があると、両眼視での視野欠損がおこります。障害される場所により半盲または1/4盲の症状がでます。例えば、脳梗塞で一側の後頭葉が機能しなくなると、両眼視で反対側の半分の視野がかける同名半盲がおきるといった具合です。

急に片目が見えにくくなる「一過性黒内症」

一過性黒内症は、急に片眼の全視野が暗くなったり、霧のように白く見えにくくなったりする症状で、通常は数秒から1分以内に回復します。網膜動脈は頭蓋内に入るすぐ手前で内頚動脈から分岐しているため、頸動脈のプラークからの塞栓が網膜動脈に迷入すると血流障害によって片眼の視力障害がおこります。一過性黒内症がおきると、同じプラークから次は脳梗塞を発症する可能性があります。一過性黒内症は、高齢者や高血圧、糖尿病、高脂血症といった血管障害の危険因子をもつ患者さんにおきやすい特徴があります。症状が怪しければ、脳血管障害のリスクと考えて早期に頭頸部の血管精査、塞栓源の検索をした方が良いと思われます。

原因を調べて専門的な治療を行い、フォローが大切

複視や半盲から脳血管障害がみつかれば、入院の上、抗血栓剤投与を開始します。脳梗塞であれば、原因となる病型によりその後の再発予防策が変わりますので、MRIで頭蓋内、頚部の血管精査を行います。これで塞栓源がみつからなければ、心原性、大動脈原性、奇異性塞栓を考えて、心房細動などの不整脈検索、胸部CT/MRIなどによる大動脈プラーク検索をしていくことになります。色々調べても塞栓源のわからないことが結構たくさんあり、時期をおいて複数回検査をすることも必要となってきます。

一過性黒内症のケースでも同様にMRIや頸動脈のエコー検査で塞栓源検索をします。場合により、頚部内頸動脈に高度の狭窄が見つかる時があり、その時は外科的に頚動脈内膜剥離術や頸動脈ステント留置術で再発予防をしなければならないこともあります。直ちに手術とならなくても、時間とともにプラークが増大するリスクがありますので、半年から1年に1回、定期的にMRA/エコーで画像追跡をします。

片目に生じた眼瞼下垂の原因が脳動脈瘤の場合、くも膜下出血発症の前兆と考えられますので、緊急手術の適応です。脳動脈の開頭クリッピング術、あるいは血管内手術でコイル塞栓を行います。

MRIによる画像診断で適切な治療を

脳の病気は基本的に、MRIによる画像検査で診断します。約15分で脳の断面、血管像が網羅的に見られる手軽で便利な方法です。X線を使った検査では血管を見るには造影剤が必要でしたが、MRAでは血流の信号をとらえて画像にしますので、患者さんの負担が減らせます。当院では、地域の先生方が気になる症状がある方をご紹介いただいた際、診察と必要な検査をして、文書で報告しております。鑑別診断が必要な目の症状のある患者さんがいらっしゃれば、ぜひご依頼ください。

早期発見で、治療が難しい高齢者の方に合う治療を

高齢化が進み、脳卒中になる方もご高齢の方が増えてきました。脳卒中で緊急入院する施設の入居者の方も多くなっています。高齢で、他の臓器に重篤な合併症をもっておられたり、高度に認知機能低下していた場合は、積極的にリハビリが難しいこともあります。 このような場合は、早期に住み慣れた環境にもどっていただき、体調に合わせたリハビリ、いわゆる生活リハビリの方が適しています。施設内でお受けいただいても結構ですし、在宅なら訪問リハビリを利用されるも良いかと思います。当院でも院内の療法士が訪問リハビリに出向いたいます。

今後、在宅医療を受ける方がますます増えると見込まれています。訪問診療でリハビリをする医療機関も増加しました。短期間の集中リハビリの後に生活リハビリを継続することは大変大事なことと思います。是非、介護保険を利用して継続したリハビリを行ってください。

単眼の症状は眼科、両目で見ておかしければ脳神経外科へ

脳卒中の予兆に早めに気がつけば、重症化する前に対応できる可能性が高くなります。私たちはよく「単眼の症状は眼科、両目で見ておかしければ脳の病気を疑え」といいます。 吉田病院では、24時間体制で日本脳卒中学会専門医、脳神経外科学会専門医、脳神経血管内治療学会専門医が救急対応し、2台のMRIが稼働しています。脳卒中に対して、いつでも専門治療が可能です。回復期病棟も併設しており、急性期から在宅までスムーズにリハビリが可能です。退院後も、訪問リハビリや定期的な画像検査で地域の先生方と連携しています。

地域の先生方は、問診で目の症状から脳卒中が疑わしい患者さんがいらっしゃれば、ぜひ お気軽にご紹介ください。

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